貧血の鑑別、ロキサデュスタット

<RDW>
RDW (RBC Distribution Width) は赤血球分布幅のことで、赤血球粒度分布図からRDW-SDとRDW-CVを算出する。

RDW-SD (単位:fL)
分布図のピークの高さを100%とした時の下方から20%の高さにおける赤血球分布幅。

RDW-CV (単位:%)
全粒度面積の68.26%の点L1及びL2を求め、次式によって算出したもの。
RDW-CV (%) = (L2-L1)/(L1+L2)x100

RDWが高いと、赤血球の大きさのばらつきが大きいということ。


鉄は、血液の中では、トランスフェリンというたんぱく質に結合し、運搬される。このトランスフェリンの量が総鉄結合能(TIBC)、そのうち、鉄が結合していないトランスフェリンの量が不飽和鉄結合能(UIBC)。したがって、TIBC = UIBC + Feとなる。
総鉄結合能のうちで、鉄が結合している割合を、トランスフェリン飽和度(TSAT)と呼ぶ。
TSAT(%)={血清鉄/(血清鉄+UIBC)}×100
TSAT 20%以下を鉄欠乏と考える。

<慢性炎症による貧血>
血清鉄が下がり,TIBC(total iron binding capacity)が下がり,フェリチンが上がる,ヘモグロビンはだいたい 7~11 g/dl程度というのが一般的な慢性炎症性貧血のパターン。
慢性感染症、自己免疫疾患(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス)、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)、がんなどが基礎疾患となる。
慢性炎症によって活性化された T 細胞とマクロファージから、IL-1、IL-6、IFN-γ、TNF-αが過剰に分泌される。
IL-6が肝臓に働き、ヘプシジンの産生が増加する。ヘプシジンは、マクロファージにある貯蔵鉄の放出と腸管からの鉄吸収を抑えるため、鉄欠乏性の小球性貧血となる。
その他のサイトカイン(IL-1、IFN-γ、TNF-α)は腎臓のエリスロポエチン産生を抑制し、骨髄の赤血球造血が低下する。また、マクロファージが活性化して赤血球を壊すので、赤血球の寿命が短くなり正球性貧血となる。

<ロキサデュスタット>
経口投与可能な低酸素誘導因子一プロリン水酸化酵素(HIF-PH) 阻害薬であり、日本では透析施行中の腎性貧血に対する治療薬として2019年9月に製造販売承認され, 同年11月に販売開始された。HIF-PHを阻害することにより、転写因子HIFのサ ブユニットであるHIF一αの分解を抑制して蓄積を促し、HIF経路を活性化させる。それにより、内因性のエリスロポエチン(EPO)産生が増加し、赤血球産生を促進する。また、内因性のEPO産生のみならず、鉄の利用能も亢進する。2020年11月に腎性貧血に適応が拡大された。

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