重症アルコール性肝炎、血漿交換

<定義、診断>

・アルコール性肝炎は、原則的に慢性肝疾患を基盤として発症するものであり、「急性肝不全」から除外する。ただし、先行する慢性肝疾患が肥満ないしアルコールによる脂肪肝の症例は、肝機能障害の原因がアルコール摂取ではなく、その発症前の肝予備能に明らかな低下が認められない場合は「急性肝不全」」として扱う。

・重症アルコール性肝炎…Japan Alcoholic Hepatitis Score(JAS)で10点以上。JASはWBC、Cr、PT-INR、T-Bil、GI bleeding or DIC、Ageから算出。

<治療>

・急性肝不全の点滴…ブドウ糖を中心とするが,肝内糖新生障害などから低血糖をきたしやすいため血糖のモニターが必要である。

・内科的治療のみでは死亡が予測され肝移植が治療選択肢としてある場合は、生体肝移植(親族への説明)、脳死肝移植について調整を開始する。

肝移植の適応基準…60歳未満が望ましい。アルコール多飲者では禁酒期間18か月の励行と医学的確認が義務付けられている。

・MELDスコア…もともとはTIPS後患者の短期予後を評価する目的でMayo Clinicの医師により考案された (Mayo End Stage Liver Disease)。その後、 一部のスコアに修正が加えられ、2002年からUNOSにおいて、 12歳以上の肝移植登録者の肝予備能評価に利用されるようになった。併せて、Model for End-Stage Liver Diseaseの略称へ変更となった。※UNOS:The United Network for Organ Sharing(UNOS):米国の臓器移植システムを管理する民間非営利団体。

 Cr、T-Bil、PT-INRから計算される。MELDスコア30~39点で、3か月以内の肝移植待機死亡率は52.6%、40点以上で71.3%である。

・血漿交換…患者血液から分離した血漿成分を破棄し、代わりに同量のFFPを補充。血漿中の病因物質を除去するとともに、不足している凝固因子などを補充することができる。

・血液ろ過透析…アンモニアなどの昏睡起因物質を除去する。また、血漿交換に伴う水・電解質異常を是正する。

  オンラインHDF…市販の補充液を用いず、エンドトキシン捕捉フィルタを通過した透析液から、一部を分岐させて連続的に無菌的な補充液を作成し、血液回路内に補液を行う方法。オフラインHDFより多くの老廃物を取り除くことができる。

  オフラインHDF…市販の補充液を用いる方法。

 脳症改善効果は、従来のオフラインHDFでは52.5%だがオンラインHDFでは94.1%であったと報告された(Fujiwara K et l. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2015)。

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