P: 2010年~2018年にEUS-TA後に手術を受けた膵癌患者12109名
E: PDACに対してEUS-TAを受けた患者。あと、経胃的か経十二指腸的かで比較した。
C:他の腫瘍に対してEUS-TAを受けた。
O:NTSの頻度、予後
以下、詳録→時間の許す限りで本文を読んで、まとめではなく、自分的に記録しておきたいと思った部分のみ載せています。
<Results>
NTSの頻度は0.330%であった。膵癌患者では0.409%、他腫瘍の患者では0.071%であった。経胃的にEUS-TAを受けた患者の0.857%にNTSを認めたが、経十二指腸的にEUS-TAした患者では認めなかった。NTSを認めた膵癌患者で、EUS-TAから診断までの期間は中央値19.3か月、生存期間中央値は44.7か月であった。それらの患者の97.4%は胃壁にNTSがあり、また65.8%のNTSが切除された。NTS切除を行った患者は行わなかった患者より優位に長く生存した(p=0.037)。
<conclusion>
NTSは経胃的穿刺後にのみ起こっていた。注意深いf/uによって、局所的なNTSを発見し、胃切除で対処できる可能性がある。
<intro>
EUS-TAの膵癌に対する感度は85-92%、特異度は96-98%と報告されている。早期合併症は1~2%。後期合併症のNTSに関して大規模な報告はなされていなかった。
日本膵臓学会が2018年12月にこの研究のことを学会員に周知して、コンタクトしてきた施設に対し、2010年4月から2018年3月に原発性膵腫瘍に対してEUS-TAを施行した患者数を訪ねる質問票を送付した。質問票に回答したすべての施設で、患者情報を入手した。他臓器癌の膵転移や、炎症性の腫瘤は除外された。
NTSの定義は、needle tractに限局した転移で、原発性膵腫瘍に対しEUS-TAを施行した際には認められなかったものとした。needle tractから離れた場所へと進展した多発腹膜播種や、切除膵の病理検査でneedle tractの周りに疑われたmicrospopic lesionsは除外された。
235施設が参加。これが初めての全国集計調査である。既報では、PDACに対するEUS-TA後のNTSは1~3.4%と報告されているが、n数は176~193と本研究より少ない。
今回の研究では、36名の、PbやPtのPDACのNTS症例だけでなく、2例のPh症例もあった。
既報では、多くて3.4%のNTSが報告されているにも関わらず、腹膜播種や生存期間はEUS-TAを行った患者群と行わなかった患者群で差がないという報告だった。日本の集計で膵切除を行った膵癌患者の生存期間は中央値22.0か月であるが、今回の研究ではNTSを認めた38例の患者の生存期間中央値は44.7か月であった。
stageIのPDAC患者でNTSを認めたものの生存期間中央値は56.9か月で、これは日本の癌登録データのstageIA(120.3か月)、IB(100.8か月)より悪かった。よってこれらの患者でEUS-TAを行った場合には注意深いf/uが必要である。
<感想>
中断されつつ、30分で読めた範囲。既報より少し頻度が低い。定義として、microscopic lesionsも除外していることに少し疑問が。それが進展してそのうちCTでdetectできる程になると考えると、それも入れるべきでは?いや、生体反応によりごく少量の癌細胞であれば、その後に消失して臨床的に問題にならない、という可能性があるのだろうか。うーむ。NTSがどのようにdetectされたのかも書いていないが…中央値19か月経って発見されるということは、CTでしょうか。自分の経験として、胃カメラで発見したことありますが。このあたりの詳細までは記載されていない。