GnP施行時、施行後の悪心嘔吐 患者さん説明用

・抗がん剤による悪心・嘔吐のしくみ、時期

 抗がん剤によって吐き気や嘔吐が引き起こされるしくみとしては、主に3つあると言われています。
①脳(第4脳室周囲)にある化学受容器引き金帯(CTZ)が刺激されることで嘔吐中枢に伝わる経路、②腸の細胞(エンテロクロマフィン細胞)からセロトニンが分泌され、迷走神経、CTZを経由して嘔吐中枢に伝わる経路、③不安などの刺激が大脳皮質を刺激し、嘔吐中枢に伝わる経路

また、嘔気嘔吐の出現する時期によっても3つに分類されます。すなわち、化学療法開始24時間以内に起こる急性、24~48時間で起こる遅発性、そして、化学療法開始前から起こる予測性です。

・GnPの催吐性

 悪心嘔吐の引き起こしやすさによって、各レジメンは4つのリスクに分類されます。

高度(催吐性)リスク(high emetic risk): 90%を超える患者に発現する
中等度(催吐性)リスク(moderate emetic risk): 30~90%の患者に発現する
軽度(催吐性)リスク(low emetic risk): 10~30%の患者に発現する
最小度(催吐性)リスク(minimal emetic risk): 発現しても10%未満である

GnPはどうかというと、GEM単剤、nab-paclitaxel単剤ではそれぞれ軽度リスクなのですが、国内で行われた第Ⅱ相試験ではGEM 単剤でも嘔吐発現率が31.5%であり、他の薬剤を併用した試験ではGEM 単剤より催吐性リスクが高いと報告されていることより、中等度リスクとなっています。

・制吐剤の種類

がん化学療法における制吐剤として使用される薬剤は主に以下です。

①NK1受容体拮抗薬
 抗がん剤投与1時間前に投薬する。これを使用する場合、デキサメタゾンを減量する(50%減量)。
 アプレピタント(イメンド) 125mg(day1)、80mg(day2,3)経口投与
 経口困難な場合はホスアプレピタント(プロイメンド) 150mg静注(day1)
②5-HT3受容体拮抗薬
 グラニセトロン(カイトリル) 2mg経口 or 1mg静注(day1) ←第一世代
 オンダンセトロン  4mg経口 or 4mg静注(day1)      ←第一世代
 パロノセトロン(アロキシ) 0.75mg静注(day1)      ←第二世代。半減期が非常に長いので、day1のみでOK。
③ステロイド
 デキサメタゾン(デカドロン) 9.9mg静注(day1)、8mg経口(day2~4)
④ドパミン・セロトニン受容体
 オランザピン 5mg/day 眠前

・GnP(中等度リスク)の急性期悪心嘔吐に対する対策

GLでは、「中等度リスクの抗がん薬による急性の悪心・嘔吐に対しては,5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾンを併用し,特定の抗がん薬を使用する場合は,それぞれの患者の状況に応じてアプレピタントを追加・併用する」と記載されています。具体的には、「基本的に5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾン6.6~9.9 mg を静注(8~12 mg を経口)の2 剤併用とするが,一部の抗がん薬(カルボプラチン,イホスファミド,イリノテカン,メトトレキサート等)を投与する場合にはアプレピタント125 mg 経口投与もしくはホスアプレピタント150 mg 静脈内投与の併用が推奨され,その際にはデキサメタゾンを減量(静注: 3.3~4.95 mg,経口: 4~6 mg)する」と示されています。

・GnP(中等度リスク)の遅発性(24時間以降)悪心嘔吐に対する対策

GLでは、「中等度リスクの抗がん薬による遅発性嘔吐に対しては,デキサメタゾンを単独で使用する。症例に応じてアプレピタントとデキサメタゾンを併用,もしくは5-HT3受容体拮抗薬,アプレピタントを単独で使用する」と記載されています。後半のことに関して、「MASCC/ESMO ガイドライン2016,ASCO ガイドライン2017 では,中等度リスク抗がん薬による遅発性嘔吐に対して、パロノセトロンとデキサメタゾンの併用療法が推奨されている」と示されています。

・GnPに対し予防投与を行っても出現した悪心嘔吐(突出性)に対する対策

追加で制吐薬を投与する。基本は、予防投与と作用機序の異なるもの。予防投与で5-HT3受容体拮抗薬を用いた場合、異なる5-HT3受容体拮抗薬を用いると効果があったという報告がある。その他、作用機序の異なるものとしては、ドパミン受容体拮抗薬(ノバミン、プリンペランどちらも試す)や抗精神病薬、ベンゾジアゼピン系抗不安薬(ワイパックス0.5~1.5mg 1錠/回、ソラナックス0.4~0.8mg 1錠/回)など。1サイクル目で効果のあった薬剤を、2サイクル目では予防的に早期から使用する。

・次回の投与前に考慮すること

初回化学療法でgrade2以上の悪心を認めた場合、次回から投与前にNK(ニューロキニン)1受容体拮抗薬の使用を考慮します。この場合、デキサメタゾンを減量します(50%減量)。

 またそもそも、化学療法のみに伴う悪心嘔吐というアセスメントでよいのか、他の因子が無いかも検討する必要があります。

・オピオイドの開始もしくは増量に伴う嘔気嘔吐ではないか?→5-HT3受容体拮抗薬併用
・高Ca血症、低Na血症などの電解質異常
・消化管が含まれる放射線照射
・消化管狭窄、イレウス
・頭蓋内器質的病変

 オピオイドに伴う嘔気嘔吐の出現頻度としては、制吐薬適正使用GL第2版ver2.2に表が記載されています。モルヒネ経口製剤とオキシコドン経口製剤がほぼ同等で、悪心が2割強、嘔吐が1割強です。フェンタニル貼付剤はそれらよりは頻度が少なく、悪心が1割強、嘔吐は7%です。このGLでは、「積極的ながん治療の時期にオピオイド鎮痛薬を開始する場合,7 日間程度ドパミンD2 受容体拮抗薬を用いて悪心・嘔吐に対する予防を行う」とされています。

モルヒネ経口フェンタニル貼付薬オキシコドン経口
悪心22%14%23%
嘔吐13%7%14%
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