高ナトリウム血症

<高ナトリウム血症の起こる原因>
高 Na 血症は溶質(Na+,K+)、そして水のバランス異常によって引き起こされるが、溶質過 剰よりも水不足で起きている病態が圧倒的に多い。
浸透圧上昇に対して、以下の2つの防御機構がある。
① 腎臓での自由水排泄低下(尿濃縮)
② 口渇刺激による飲水行動での自由水補充
この二つのいずれかもしくは両方が障害されたとき、高ナトリウム血症を生じる。


<自由水喪失の理由>
①腎臓以外からの自由水喪失
消化管からの喪失
不感蒸泄(800~1000ml/day)
※これら、腎臓以外からの自由水喪失の際には、腎臓での自由水排泄低下という防衛機制が働くため尿浸透圧が600mOsm/kg・H2Oを超えて上昇する。
②腎臓からの自由水喪失
中枢性尿崩症
腎性尿崩症
浸透圧利尿
※腎性尿崩症の原因は以下の通り。
 遺伝性
 薬剤性:リチウム,デメチルクロルテトラサイクリン,ストレプトゾシン
 電解質異常:高 Ca 血症、低 K 血症
 シェーグレン症候群
 アミロイドーシス
 浸透圧利尿:高血糖,マンニトール,高尿素窒素
 妊娠
 鎌状赤血球貧血
 頭蓋内損傷
 低酸素脳症
 腫瘍浸潤:原発性,転移性
 サルコイドーシス
 脳動脈瘤
 脳炎

<鑑別>
尿浸透圧が重要!

尿浸透圧<300 mOsm/kg
 中枢性尿崩症
 腎性尿崩症
 多飲多尿
尿浸透圧 300~800 mOsm/kg
 volume depletion を伴う中枢性尿崩症
 partial 中枢性尿崩症
 partial 腎性尿崩症
 浸透圧利尿
尿浸透圧 >800 mOsm/kg
 腎臓以外での自由水喪失
 Na 過剰負荷

<高ナトリウム血症の症状>
160 mEq/L を超える場合や急速発症の場合には、重篤な神経 症状(易刺激性,痙攣,意識障害)や脳血管障害 (脳出血,くも膜下出血)を引き起こすとされ、さ らに180 mEq/Lを超えると死に至ることもある。

<治療>
・145 mEq/L まで下げるように治療介入する。
これまでは低 Na 血症と同様に、Na 補正速度は 0.5mEq/L/時とし、1 日の補正が 10 mEq を超えないようにとされてきた。しかし近年の、成人を対象とした大規模コホート研究では、緩徐補正(>0.5 mEq/L/時)と急速補正(≦0.5 mEq/L/時)とで、30 日後の生命予後、痙攣、意識障害、脳浮腫の発症頻度に差が認められなかった(Clin J Am Soc Nephrol 14:656-663, 2019)。

・自由水欠乏量(L)={(高 Na 血症時の Na 値-140)/140}×TBW
   TBW は通常体重の 50~60%で計算されるが、 高 Na 血症では体重の 40%とするのが妥当。
体重の約 3 倍の自由水(mL)を投与すると,Na を 1 mEq 下げることができると予測される(例: 体重50 kgであれば、150 mLの自由水投与でNaが1 mEq低下)。

・補液としては、一般的に5%ブドウ糖液を補充 液に用いる。
高 Na 血症かつ循環動態不全をきたす volume depletionを伴う場合は、細胞外液による輸液で循環動態を落ち着かせることを優先するが、その後は低張液を組み合わせて、volume 管理と高 Na 血症補正の両方に介入する。

・ちなみに…意外な盲点として…
赤血球輸血のナトリウム濃度は123mEq/L、FFPのナトリウム濃度は167mEq/Lと高い。

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