肝胆膵の画像診断より。
転移性肝腫瘍は、多くの場合、乏血性。しかし、多くの場合、ごく小さな段階では多血性で、栄養動脈は肝動脈。それが、腫瘍の増大とともに血液供給が追い付かなくなり、中心部が繊維組織に置換されたり、浮腫が起こったり、壊死に陥ったりする。
CTのヨード造影剤や、Gd-DTPAなどのGdキレート剤で肝臓の造影を行うと、これらの造影剤は細胞外液腔に非特異的に分布するため、繊維組織に置換されたり浮腫に陥ったりした腫瘍は時間とともに内部が濃染され、平衡相では周囲肝臓と区別がつかなくなってしまう。そのため、腫瘍と肝実質のコントラストが最もついている門脈相に撮像する必要があるが、診断には限界がある。
これに対して、Gd-EOB-DTPAは静注後15~20分で肝細胞に取り込まれ、胆汁に排泄されるため、静注後15~20分の時点において造影剤が細胞外液に分布することはない。そのため、腫瘍と肝実質のコントラストが明瞭であり、高い検出能を有する。
では、SPIOは?
SPIO造影MRIについておさらい。肝臓のKupffer細胞に取り込まれ、T2短縮効果を発揮し、非癌肝実質を低信号化する。そのためSPIO造影後のT2像では転移性肝腫瘍は相対的な高信号として描出される。Gd-EOB-DTPA同様、腫瘍が造影されることはない。しかし、T2強調画像は撮像時間が長く、画質もやや悪いため、最近では使用頻度は減っている。
ちなみに、転移性肝腫瘍と血管腫の鑑別に苦慮することがしばしばある。EOB-MRIでも、肝細胞相では血管腫も低信号なので、転移性肝腫瘍との鑑別が困難なことがある。さらに、ダイナミックMRIにおける造影効果はEOBは従来のGd-DTPAに比べて弱いので、辺縁の濃染の出現頻度が低い。heavy T2では血管腫は比較的高い高信号を示すので鑑別に有用。