mTOR阻害薬

①mTORって?
まずはラパマイシンの話から…。ラパマイシン(シロリムス)はイースター島(現地名 Rapa Nui)の土壌から採取された放線菌から発見
されたマクロライド系抗生物質である。ラパマイシンがターゲットとする蛋白をTOR(target of rapamycin,ラパマイシン標的蛋白質)と呼
び,哺乳類における TOR をmammalian TOR , mTORと総称する。
mTOR は細胞質において細胞のシグナル伝達系の中心に存在する約 290 kDa の巨大蛋白質であり,セリンスレオニンキナーゼに分類される。細胞の分裂や成長,生存における調節因子としての役割を果たしており,主に細胞の増殖生存シグナルである PI3K/Akt 経路によって制御されている。mTOR の活性化の結果,蛋白質合成が促進されて細胞増殖や細胞周期の進展,血管新生などが誘導される。
ラパマイシンとその誘導体はまず 12 kDa の細胞質蛋白質であるFKBP12 と結合し,複合体を形成する。この複合体がmTOR 活性を抑制する。

②mTOR阻害薬
多くのヒト癌細胞において,mTOR の活性化によって癌細胞の増殖,アポトーシスの抑制,血管新生などが亢進し,腫瘍の増大・転移が促進されていることが明らかになってきた。
エベロリムス(商品名アフィニトール)は抗悪性腫瘍薬として国内で最初に承認された経口 mTOR 阻害薬である。腎細胞がん、神経内分泌細胞癌、乳がん、結節性硬化症に適応がある。

③mTOR阻害薬の副作用としての間質性肺炎
エベロリムスやテムシロリムスなどの mTOR阻害薬では 17〜28%に間質性肺炎を生じると報告されている。mTOR阻害薬においては、間質性肺炎を生じても、無症状、軽症であれば投与継続できる可能性もある。

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