下痢を有する入院患者さんで、トキシン陰性、GDH陽性の結果となり、NAAT提出。
トキシンB遺伝子陽性、バイナリートキシン陽性、変異型tcgC遺伝子陰性、O27型株判定陰性との検査結果が返ってきたので、勉強。
トキシンの迅速検査の感度は50~70%と良くないため、偽陰性の可能性がある。
トキシンB遺伝子NAATは、わが国では2019年に機器が保険適応となった。感度87~100%、特異度98.8~94.4%とともに高い。
2002年より欧米を中心に発生したBI/NAP1/027株と呼ばれる強毒性ディフィシル菌が問題となった。BI/NAP1/027株は、バイナリートキシンという毒素を産生する株の一つである。これは、従来トキシン A,トキシン Bが知られてきたが、それに加えて新たに発見されたトキシンである。バイナリートキシン(C.difficile binary toxin: CDT)は、腸管上皮細胞内に取り込まれると、細胞骨格を構成するアクチンをリボシル化して破壊する。そして、このアクチンによってせき止められていた微小管が細胞表面まで延びて突起を 形成するようになり、この突起を利用して細菌が腸管上皮細胞と強固に接着できるようになる。またO27株では、トキシン A とトキシン B を抑制する役割を担う TcdC 遺伝子が欠損している。このため、この菌株では最大でトキシン A が通常株の 16 倍,トキシン B が通常株の 23 倍、産生される。2014年に発表された2,057例のCDIを解析した研究では、027株はイレウスや中毒性巨大結腸症、偽膜性腸炎といった CDI の重症例を生じやすく(調整 OR 1.74, 95% CI 1.36-2.22)、ICU 入室や腸切除、30日以内の死亡といった重篤な転帰を生じやすかった(調整 OR 1.66, 95%CI 1.09-2.54)。
Toxin B遺伝子、Binary toxin遺伝子、変異型tcdC遺伝子の全てが検出された場合に、027型 様株と判定される。